看護師として100歳の彼から学び続けていること

看護




私たちがしたことは正しかったのか?

苦しめただけではないのか?

他に手段はなかったのか?

いまだに、考え続け、私の心に眠り続けるAさんの旅立ちの日のお話

 

看護師としての働き方に迷っているからはこちら。

DNR同意書が取れていた100歳の彼

誤嚥性肺炎を繰り返し、心不全も悪化し、入院が長期化していたAさん100歳。

誤嚥性肺炎とは、本来なら食道を通って胃に入る食事や唾液などが

気管に入り肺に入って、炎症を起こす病気です。

肺炎というので、なんとなく軽症のイメージがある人もいるかもしれませんが、高齢者にとっては致命的な病態です。

心不全もあり、正直なところ退院は見込めない状態でした

Aさんは、元々インテリジェンスが高く博識なジェントルマンでした。

入院中も、自宅で雇っていたお手伝いさんが24時間付き添っていました。

家族の面会をほとんど見かけたことがありませんでした。

入院中のAさんの身の回りのことは、お手伝いさんも助けてくれました。

認知症もなく、ほんとに100歳とは思えない凛々しいAさん

病気のため弱ってはいましたが、昔の面影が残っており威厳を保たれていました。

私たち医療者に対しても、穏やかでありつつ、自分の意見ははっきと言う方でした。

今回の入院で、医師の説明のもとDNRの同意書もとっており、Aさん自身でサインされていました。

また、息子さんのサインも頂いていました。

※DNRの同意書とは※

人生の最終段階における医療について、医療者とご本人・ご家族間で共有するための確認書です。
例えば、心肺停止したときに胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行うのか、薬剤を使うのか、挿管(気管に管を入れて、人工呼吸器を使用)するのか、などについて本人や家族にの意向確認し、共有します。

Aさんは、人工呼吸器や心臓マッサージなどは希望しておらず、最低限の水分点滴と酸素投与のみを希望していました。

また、抗菌薬や利尿薬の治療をしながらも、食べられるときには食べることを望んでいました。

100歳の彼の最期のとき

その日、私の勤務は夜勤でした。

仕事が始まると、最初に担当患者さんをまわって挨拶をします。

「夜間担当する⚪︎⚪︎です。どこか痛いところはあります?苦しくないですか?」など、体調を伺いながらベッド周りの環境を整えたり、点滴や酸素の確認を行います。

「一旦退室しますので、何かあればナースコールで呼んで下さいね」

と、Aさんとお手伝いさんに伝え、退室しました。

就寝前には、血圧や体温などを測定し

身体の向きを調整し

酸素の流量、点滴の速度などを確認しました

そして、21時過ぎにおやすみなさいと消灯

その後も、約2時間ごとにAさんの部屋を訪室し身体の向きを調整したり、医療機器の確認を行います

Aさん心電図モニターをつけていたので、部屋に行かない時間帯もナースステーションでモニター管理を行っていました。

アラームが鳴る

4時すぎ

シンと静まる深夜の病棟内にアラームがこだまします。

アラーム音は、異常のサインです。

「ピンポン ピンポン ピンポン」

誰のモニター?と、見ると

なんとAさんの脈拍数が50を切っています。

40代の脈拍の方で正常の方もいますが、Aさんは通常70〜80回/分だったので、異常なことです。

エ?エ?

ナースステーションにいた、先輩看護師と私は一目散にAさんの部屋にかけつけます

ぱっと見るAさんは、ただ眠っているよう。

お手伝いさんも「どうしたの??」とびっくり

もう一度、モニターを確認すると

脈拍数40回、酸素飽和度(体の中に取り込まれている酸素)100%

呼吸は浅いがしている、苦しそうな呼吸ではない

痰の吸引をしてみるが痰はない

心原性だ(心臓が止まろうとしている)

「Aさん!Aさん!」呼びかけるが反応なし。

頚動脈は触れるが、弱い。

 

当直の先生呼ぼう

主治医にも連絡しよう

先輩看護師と連携をとり、動く

先輩「AさんDNRだよね?」

私「そうです」

部屋に持ってきていた電子カルテで二人で同意書を確認していると。

当直医も到着。

お手伝いさんの訴え

心停止に備えて、ベッドサイドモニターの準備などしていると

お手伝いさんからとんでもない言葉が!

 

「なんで?なんで?なんとかしてください!昨日の夜は元気でしたよ?ね、看護師さん、あなた担当だったでしょ?どういうこと?なんとかしてくださいよ!こんなんじゃいたたまれません!先生、私が家族に任されてるので、わたしの責任でやれること全部やってくださいよ!!助けてあげて!」

 

困惑しました。

DNRの撤回にはじめて遭遇。

しかも、家族でなく他人。

長い間一緒であったお手伝いさんといえども、他人は他人。

家族に連絡をとってもらうことにしました。

家族とお手伝いさんの携帯がつながり第一声

「旦那様の息が止まりそうで、助けてもらってますから早く来てください!」

おっとそうきた・・・

その後、当直医が、家族と直接電話をし、心臓が止まりそうなこと、DNR同意書があることを説明しました。

家族は、それでもできるだけのことをやってほしいと言ったそうです。

うーむ。

CPR開始

当直医「救急カート持ってきてください。コールブルーお願いします」

わたし「(え・・・4時にコードブルー・・・DNRなのに?)」

当直医「ALSプロトコールに法って蘇生開始します」

わたし「え・・・」

CPRをはじめる当直医「換気お願いします」

研修医コール、当直の看護師師長コール、休憩中のナースを起こし、人は集めました

しかし、リーダー看護師と話し、コードブルーはしませんでした。

なぜなら・・・
・深夜4時
・DNR同意書あり
・本当の緊急時ではない

寝ている患者さんたちを起こしてまでコードブルーはできないという判断です。

当直の看護師師長にも確認しました。

二次救命処置ALS

除細動器が病棟ないためAEDを装着し、集まった医療者で代わる代わる胸骨圧迫と換気を行いました。

当直医の主導のもと4分ごとのアドレナリン(心停止やショック時に使う薬剤)投与を合計8回

血ガス採取を指示する当直医

大腿からチャレンジするも採血できない研修医

血ガスいるの?アドレナリンいる?

家族が到着するまでのCPRのみでいいのではないか?

わたしはそう思っていました。

なんだこれって・・・

空虚を感じながらやってるかやってないかCPRを継続しました。

4分間のタイマーをかけ、アドレナリン投与をしました。

たぶんあの場にいた誰もが、モヤモヤ感を抱えていました。

家族到着するが・・・

やっと家族到着しました。

やっとCPRの終わりだと思いきや

「おやじがんばれー!」と、Aさんの手を握る息子。

もちろんモニター上は心停止、胸骨圧迫の波形のみです。

AEDも「ショックは不要です」と音声が流れています。

心停止にAEDは反応しません。

ショックボタンが押せるのは、致死性の不整脈のみです。

しかし、家族が希望しているCPRを医療者の判断で勝手に辞めることはできません。

看護師が判断することもできません。

医師が説明をしCPRの中断について同意を得るのみです。

CPRを開始したときから、蘇生できないことは医療者わかってしました。

でも、蘇生を開始してしまいました。

医師の家族への説明だけが、蘇生の中断を許します。

蘇生開始から1時間ほど経ち、やっと「現状では回復できないそうです」と当直医より家族に説明がありました。

家族「ありがとうございました」

Aさんがやっと解放されました。

言い方は良くないと思いますが、そう見えました。

同時に、私たちも解放されたように思いました。

お見送り

壮絶な蘇生が終わり、エンゼルケア(死後の処置)に着手したのが、6時を回っていました。

エンゼルケアをしながら、わたしはむなしさと申し訳なさでいっぱいでした。

ずっと謝りながら、Aさんに問いかけながらケアをしました。

「Aさん、辛くなかった?これを望んでいた?」

 

家族は、お葬式のことなどを話し合っていました。

ケアが終わり、綺麗になったAさん

気合を入れて死化粧をしました。

何かをぶつけるように。

その後、霊安室へ移動し、お焼香して、出棺を見送りました。

看護師として分析する

壮絶な夜勤が終わり、夜勤メンバーとこの日のことを話しました

みんな悶々としていました。

「先生が蘇生をはじめたのが悪いよね。」

「なんで、もっとうまく家族に説明してくれなかったんだろう。」

「お手伝いさんに、DNRを撤回する権利とかあるのかな?」

「あの場合のコードブルー深夜にしないよね、できないよね」

「アドレナリンあんなに使ったけど、めっちゃ辛かったかもね」

「胸骨折れないように、軽めに押した」

「血ガスはとる意味ないでしょう」

「Spo2 100%だったから痰詰まりでもなかったよね。心臓だよね。寿命だよね。」

そんな素朴な疑問や、数時間前の思いをそれぞれ発散しました。

思いを共有することで、私自身の気持ちも少し落ち着いたのを覚えています。

今回の悶々とした出来事の学びを私なり考えてみました。

観察・アセスメント不足

急変は8時間前から、変化が起こっていると言われています。

急変をさせるのは、看護師の観察・アセスメント不足です。

私が、もっとしっかり観察していたら、きっと何かしらの異変に気づけたはずです。

たとえ、治療や積極的な管理ができない状態だとしても、あらかじめ主治医や当直医へコンサルできいたのではないでしょうか。

もっと早めに家族を呼ぶこともできたでしょう。

家族やお手伝いさんの気持ちの整理の時間をとることができたと思っています。

同意書を取った後のアフターフォロー

同意書には有効期限がありませんでした。

中には数年前にとった同意書が有効であるということがあります。

定期的な同意書の確認は重要です。

その都度、説明し、現状を共有しておきたいと思いました。

なかなか看護師の立場からは難しい問題なのですが・・・。

がんや難病のターミナル領域では、もっと密に今後やりたいことや痛みや苦しみをとることについてインフォームドコンセントができていると思います。

しかし、今回のようなケースは、肺炎・心不全という一般の方には理解しづらい終末期です。

コミュニケーション不足

医師と看護師

医療者と家族

家族と周りの人

もう少し、うまく連携をとることができたのではないかと思っています。

 

私はAさんのことを忘れることはありません。

いつも問い続けています。

そして、謝罪しています。

 

ごめんなさい。

ただただ安らかな眠りを祈って。

 

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