助産師として無痛分娩について考える

医療・看護




助産師として出産をお手伝いするときに最も大切にしていること

「母子ともに安全であること」

第一は、これに限ります。むしろこれ以外にあるの!?ってくらい。

2018年の合計特殊出生率は1.43

現在の日本では、出産するとしても、1回限りという方のほうが多いのです。

その影響もあるのか、料理の豪華さ、アメニティ、エステなどのホスピタリティーが重要視されたり、逆に、いわゆる自然な出産をしたいと助産院を選択したり、出産に対して、選択肢が多くなりました。

それが悪いことだと思いません。

世界最高レベルの医療水準があるからこそ選べる選択肢だと思います。

しかし、妊婦さん本人や、家族のしたい出産だけが先行してしまうことは危険であると思います。

周産期医療に関わる医療従事者は、妊娠出産の怖さを常に感じています。

正常に経過していても、1分後、1秒後には母子ともに危険な状態になることを経験しています。

何が起こるかわからないことをいつも頭において、緊急事態に備えてます。

安全である前提として妊産婦さんや家族がリラックスして出産に臨めるように、身体面、精神面をサポートしています。

安全、安全といいつつも、その中で「〜したい」という希望に沿えるように、安心を与えたいと思っています。

一助産師として無痛分娩について考える

私は、無痛分娩にほぼ100%賛成派です

もし自分が出産するなら無痛分娩を選ぶと思います。

ただ、職業柄、陣痛の痛みも一度は経験したいので、陣痛からの麻酔導入をのダブルセットアップでやってもらいたいですね。(笑)

硬膜外カテーテルを入れておいて、麻酔薬は希望時に開始するスタイルで!

無痛分娩について相談されることが結構あります。

その時は、まずは無痛分娩の何に悩んでいるか聞きます。

大抵は、陣痛を感じずに出産することに対する後ろめたさみたいなことが多い印象ですね。

相談のときのアドバイス

・陣痛の痛みに特別な意味はなく、子宮筋が収縮する痛みだから、愛情とは切り離して考えてOK

・麻酔のリスクや分娩中のリスクを主治医にしっかり説明してもらう

・分娩料金に上乗せされることが多いので余裕をもった予算設計

・無痛分娩に慣れている施設、緊急時の体制が整っている施設がおすすめ

・器械分娩などによる産後の痛みや後陣痛には鎮痛剤をフル稼働してOK

・「痛いのが嫌」という理由で無痛分娩を選んで問題ないし、卑屈になる必要もない

・良いお産、悪いお産、楽なお産なんてもものはなくて、全部尊い命がけの出産

・無痛分娩だからこそのリスクもある

無痛分娩を考えるご家族にオススメの資料

無痛分娩に関して一般向けの資料が厚労省と産科麻酔科学会から出ていますので、まずはそれに目を通しましょう。

「無痛分娩」を考える妊婦さんとご家族の皆様へ 厚生労働省

無痛分娩Q&A 日本産科麻酔科学会

無痛分娩に賛成する理由

  • 痛みに肯定的な意味を感じない
    陣痛だけでなく、基本的に痛みにはプラスの意味がないと思うから、取り除けるる痛みならないほうがよい
  • リラックスできる可能性が高い
    陣痛や出産に対して過剰に不安になったり、緊張状態にある妊産婦さんをみてきたので、リラックスして出産に臨むことは大切だと考えています

無痛分娩関連の事故のニュースがクローズアップされることがありました。

あたかも、無痛分娩が直接の死因とばかりに報道されていたのが気になりました。

報道やメディア等では、事故の内容と無痛分娩との直接の関係がわかりにくいのですが、実は無痛分娩自体がリスクが高いわけではなく、あくまで、体制が整っていない病院での無痛分娩が危険であるということは確かです。

無痛分娩の症例数が経腟分娩の三分の一占める北里大学病院のHPには細かく無痛分娩の管理方法が掲載されていました。

医療者向けなのでちょっと難しい内容ですが・・・

北里大学 無痛分娩管理方法・看護マニュアル

また60%以上が無痛分娩という順天堂医院もマニュアルがあります。

順天堂医院 無痛分娩パンフレット

ここまでしっかりとした管理が必要だということです。

無痛分娩とは本当に痛みがないのか?

数年間、無痛分娩を取り扱う施設で勤務していました。

そこでは、無痛分娩希望者は計画分娩を行っていました。

計画分娩とは、入院日をあらかじめ事前に決め、出産前日にご入院いただき、出産当日の朝から麻酔のための管の挿入を行い、子宮収縮剤を使用し、お産を進めていく出産方法です。

無痛分娩では、自然に陣痛が来るのを待ってから麻酔を開始することも可能です。

これは、24時間365日無痛分娩の体制が整っていることが大前提ですので、人員的に余裕がある施設のみが提供できるシステムでしょう。

印象としては、計画無痛分娩を実施している施設が多いと思います。

無痛分娩の妊産婦さんは、大半の方は、陣痛中も本を読んだり、家族と談笑したり、眠ったりとリラックスして過ごすことができていました

麻酔といっても、下半身のみに効かせる麻酔なので、意識ははっきりしたままで下半身の感覚が鈍くなってきます。

陣痛やお産の痛みはかなり抑えられますが、胎児の下降感や圧迫感は残ります。

痛みの感じ方には主観的な部分も影響しますので、全員が完全に痛みを感じないかというと、そうではありません。

痛みが強く、麻酔薬を追加、追加しながらも、本人の思ったような除痛ができてないこともありました。

個人的には、麻酔を始めるタイミングも重要だと思います。

計画的な無痛分娩よりも、陣痛が来てからの麻酔開始がスムーズに出産に至るような気がしましたね。

出産後は、麻酔は終了しますでの、会陰切開・裂傷があった場合の傷の痛みや後陣痛はあります。

しかし、産後は、内服薬の鎮痛剤が使用できますので、安心してください。

無痛分娩を選んだから、出産後の痛みがあって当然なんてこともまったくないのです!

とにかく、取れる痛みはできるだけ取り除く!

これは、出産に関わらず、基本中の基本だと思います。

無痛分娩のメリット

心臓や肺の調子が悪い妊婦さんの、呼吸の負担を和らげ、体の負担を軽くする

血圧が高めの妊婦さんの、血圧の上昇を抑えることができる

痛みを和らげることができ、産後の体力が温存できたと感じる人が多い

厚生労働省「無痛分娩」を考える妊婦さんとご家族の皆様へ

なんでも言ってますが・・・何よりも痛みが軽減されることは最大のメリットです。

痛みは、さらなる痛みを招くとも言われています。

痛みを感じると、交感神経が緊張します。
その結果、筋肉の緊張が強まったり、血管が収縮したりします。
これにより血液循環が悪くなるため、その部分に新鮮な酸素や栄養がとどこおります。
実は血液循環の低下、酸素不足は、痛みをもたらす「発痛物質」を産生させます。
そのため痛みがさらに強まります。痛みが痛みを招く「悪循環」をもたらしてしまうのです。

NTT関東病院ペインクリニックHPより抜粋

陣痛の痛みだろうと、痛みには変わりありません。

特別な意味もありません。

陣痛は赤ちゃんを出産するための、筋肉の収縮です!

陣痛や痛みに対する恐怖心が強い方にとっては、緊張を緩めリラックスできる分娩方法であるといえます。

無痛分娩のデメリット

基本的に無痛分娩に賛成なのですが、通常の経腟分娩にはない医療処置があるのでそれなりのリスクがあることは抑えておきたいところです。

日本産婦人科学会は無痛分娩に関して以下のように述べています。

無痛分娩のデメリット

無痛分娩は、経腟分娩と違った分娩経過をとる(子宮収縮剤、吸引・鉗子分娩が必要となる率が高いなど)

無痛分娩は、経腟分娩のみを扱うときよりも、より高いスキルとマンパワーが必要

局所麻酔薬中毒や完全脊髄くも膜下麻酔などの合併症とトラブルシューティング対応

硬膜外カテーテル挿入や麻酔薬使用での副作用

母体の脊椎の硬膜外腔にカテーテルを入れるため、その医療行為に伴う合併症や使用する薬剤の副作用が起こりえます。

無痛分娩では、母子の安全を守るために、一般的な合併症や副作用には、足の感覚が鈍くなる、力が入りづらくなる、血圧の低下、排尿の感覚が鈍くなる、かゆみ、頭痛などがあります。

これらについては、点滴を使用したり、姿勢の工夫、無痛分娩中に血圧計、体内酸素モニター、胎児心拍モニター、陣痛計などを取りつけて観察を密にすることが早期発見・早期介入が可能です。

また、排尿に関しては一時的に膀胱に管を入れ、排尿を促すこともあります。

まれな合併症としては・・・

脊髄くも膜下腔に麻酔薬が入ってしまう、麻酔の針の影響での強い頭痛、カテーテルを入れた脊椎の中に血液の塊や膿がたまり手術が必要なことなどがあります。

これらは、適切な対処があります。

そのため、このような事態を早期発見し、早期介入できることが重要です。

出産そのものに伴うリスク

子宮口が開いてから赤ちゃんが生まれるまでの時間がやや延長する、吸引分娩や鉗子分娩、帝王切開が増えるというデータが報告されています。

これは、施設の方針に左右されるところだと思います。

器械分娩となるため、会陰や膣の傷が大きくなる可能性があります。

子宮収縮剤であるオキシトシンの使用率が高くなります。

無痛分娩の出産費用

妊娠出産に関しては自費診療になりますので、施設ごとに差がありますが、通常の出産費用プラス10万円程度の施設が多いようです。

無痛分娩に限りませんが、妊娠出産に関わる費用は、地域差、施設間の差がかなりあります。

健康保険から42万円程度の出産一時金が出るとはいえ、東京ではほとんど病院がこの金額では収まりません。

事前に各種費用を確認しておくことをおすすめします。

東京都内でも、妊婦検診に毎回受診券プラス1万円程度の負担から受診券内で収まる(手出しなし)というところまで様々です。

ちなみに、妊婦健診について東京都では14回分の受診券が補助されています。

1回目は初期検査で約10,000円、2〜14回目は約5,000円が助成されています。

また、妊婦検診、出産費用は医療費控除の対象となりますので、合わせて忘れないように申請しましょう!

無痛分娩のリスクに対する考え方

医療行為には、その大きなメリットの裏には、少ない確率ながらも、必ず合併症や副作用があります。

むやみに怖がるのではなく、メリット・デメリットを知り、パートナーや家族と話し合い、納得した選択ができることが一番です。

施設の方針も影響しますので、説明会などがある場合には参加しましょう。

主治医や助産師へ積極的に質問するなどコミュニケーションをとることが重要です。

施設によっては、途中からでも無痛分娩に変更できる場合もありますので、悩んでいる方はそのような施設を考慮することもひとつです。

また絶対に無痛分娩をしたいという、強い思いがある場合には、365日24時間体制で無痛分娩が可能な施設が絶対条件となります。

麻酔科医の不足や、病院の体制の問題から平日、日中のみ麻酔対応可能としている施設も少なくありません。

無痛分娩に限らず、出産は、最後まで、誰しもが1分後には何が起こるか分かりません。

何か異常が発生すれば素早く対応できる体制をとっている施設、麻酔の合併症だけでなく産科的な問題が発生した場合でも迅速に対応可能な施設を選択することが一つのポイントです。

無痛分娩が適さない人

痛みなんて意味がないとぶった切ってきたのですが、実は無痛分娩ができない人もいます。

背骨が湾曲している人はカテーテルを挿入するのが難しいことがあります。

また飲んでいる薬、持病、アレルギーなどでカ無痛分娩ができない人がいます。

何度も書いていますが、何はともあれまずは主治医や病院へ相談しましょう。

無痛分娩では母性が生まれない!?!?

無痛分娩の話になると、必ずと言っていいほど

「出産はお腹を痛めてこそのもの」

「痛みを乗り越えるから我が子がかわいい」

などの、痛みに対して過剰な意味づけをしたり

出産の痛みを我慢するのが美徳のように言う方がいます。

はっきり断言します。

子への愛情の感じ方と分娩方法や痛みの有無は無関係です。

そんな呪いをかけてくる人とは、一線をおきましょう。

それなら、同じ親となる父親はどうなの?って話です。

ただ、射精しただけで父親になるなんて、いわゆる父性なんて生まれるはずないのでは?

何も辛いことはないのに、父性は??

子への愛情と陣痛の痛みを感じる感じないは関係ありません。

子への愛情の感じ方や時期は個人差があります

経腟分娩でも無痛分娩でも帝王切開でも変わらないので安心してください。

また、無痛分娩だから楽なお産ということも全くありません。

経膣分娩も、無痛分娩も、帝王切開もすべてすべて命がけで挑む尊い出産です。

無痛分娩ができる施設の探し方

 日本産婦人科学会が2016年に行った調査では、全国の医療施設が取り扱った分娩のなかで、無痛分娩の割合は6.1%でした。

欧米と比較すると少ないことはわかっていますが、一概に良し悪しの問題ではないと思います。

私は、出産方法云々よりも、「安全である」ということが最も優先すべきことだと思っているからです。

日本の妊産婦死亡率、新生児死亡率は世界でも最高水準レベルにあります。

それは、公衆衛生の発展と、周産期医療に関わる医療従事者が安全第一で日々取り組んでいるからだと思います。

厚生労働省の公式HPには、掲載を希望した無痛分娩取扱施設の一覧をみることができます。

全国の情報が検索できるため、無痛分娩を考えている方は、自宅の近くや里帰り先の近隣に無痛分娩を実施している施設があるかどうか確認しておきましょう。

このデータには、施設の基本情報と医師の人数や診療実績も載っているため、参考になると思います。

母子ともに安全に生まれてくること

私は、妊娠出産のゴールはここにあると思っています。

これが成り立ってこそ、そのほかの個々の選択肢があるのです。

無痛分娩は、あくまで安全の上に成り立つ選択肢のひとつ

でも、選択肢が増えることは、妊婦さん産婦さんにとって素晴らしいことです。

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